中間試験結果
(2005/07/11)
解答例,配点,採点基準など
- 問1
- 解答例
(1)万有引力の公式 F=G*m1*m2/r^2
において,地球の質量をm1,m2を50kgとおくと,
F=6.7*10^-11*6.0*1024*50/(6.4*10^3*10^3)^2
=4.9*10^2[N]
(rの2乗,10の-11乗を,それぞれr^2, 10^-11 と表記している。以下同様)
(2)(1)と同様に,m1=m2=50kg,r=1としてF=6.7*10^-11*50*50/1^2
=1.7*10^-7[N]
(3)万有引力はすべての物がもっているが,普通の物体同士の間の引力にくらべ,物と地球間の万有引力ははるかに大きいので,日常生活で感じる万有引力は地球との間のものだけである。
- 配点と採点基準
(1),(2): 各10点。重大な計算ミスがあった場合は5点。軽微な計算ミスのみの場合は8点。
けた違いは,記述から最終的な写し間違いと判定できる場合を除き,重大なミス。
有効数字のとり方では減点しない。
(3): 5点。地球と地上の物体間の引力に比べて,地上の物体同士の引力がはるかに小さいことが表現されていればよい。
- (1)で,距離の単位をkm→mに換算していないミスが目立った。
- 問2
- 解答例
(1)微惑星の集積時,および核の形成時に,位置エネルギーの解放により発生し,
また放射性同位元素の崩壊によっても発生した。
(2)地球上で火山が分布する地域は,プレートの分布の観点から見ると特定の場所に限定されており,
それらは,海嶺などのプレートの発散境界,島弧などのプレートの収束境界,および海洋島などのホットスポットに
分類される。
(3)火山岩は,斑状組織を示し,深成岩は等粒状組織を示す。
両者の組織の違いは,火山岩は噴火の際に地表に出たマグマが急速に冷えて形成されたのに対し,
深成岩は地下でゆっくり冷えて形成されたことによる。
(4)[例]輝石:SiO4四面体が,2つの頂点の酸素を共有して鎖状に配列している。
- 配点と採点基準
(1)7点。放射性元素の崩壊のみは4点,など部分点を与えた。
(2)6点。発散境界,収束境界,ホットスポットを各2点としたが,すべて挙げた人はいなかったため,
部分点に対して1点ずつ上乗せした。
(3)6点。特徴3点,理由3点。冷却速度により組織の差が生じることが本質。深さは本質的ではない。
(4)6点。造岩鉱物として適切な鉱物名を挙げてあれば4点。構造の特徴として,間違いではない記述があれば2点
(かなり甘く採点している)。鉱物名でないもの(岩石名など)は,0点。
- 問3
- 解答例
(1)P波は縦波であり,固体と液体のいずれでも伝わる。S波よりも速い波で,最初に到達する波である。
S波は横波であり,固体のみ伝わる。P波よりも遅い波で,2番目に到達する波である。
(2)表から,まず各観測点の震央距離を所用時間(走時)で割って見かけの速度を求めると,
D=180kmまでは,6km/秒で,それ以遠はそれよりも速くなる。これは,上層の下にP波速度のより速い下層があり,
180kmよりも遠い地点では,下層を伝達した屈折波が先に届いていることを意味する。下層のP波速度を求めるために,
180km地点と220km地点との間の速度,220km地点と244km地点との間の速度,などを300km地点まで計算する。
たとえば280km地点と244km地点の間の速度は,(280 - 244)/(42.5 - 38)=8km/秒となる。180km-220km区間以遠は
いずれも8km/秒となり,これが下層のP波速度となる(テキストp59, 図40を参照)。
- 配点と採点基準
(1)12点。縦波と横波,速さの違い,S波が固体のみを伝わること,に各4点を基準とし,内容により加点ないし減点。
(2)13点。上層6km/秒,下層8km/秒の答えが得られていれば,各5点。説明に対して3点(説明のない,あるいは不充分な解答が多かった)。
- 問4
- 解答例
(1)平常時には緩やかに沈降しており,地震発生時に急激に隆起する。
これは,以下の様に説明される。日本列島の乗っている陸側のプレートの下には,
海洋プレートがゆっくりと沈み込んでおり,それによって陸側のプレートが引きずり込まれて,
陸側プレートの海溝側は徐々に沈降している。陸側プレートが変形されて蓄積される歪のエネルギーが
限界を超えると,破壊が生じて陸側プレートは反発して一気に隆起する。これが地震の発生である。
(2)ウェーゲナーは,かつて巨大なひとつの大陸パンゲアがあり,それが分裂し移動することにより現在の
大陸分布が形成されたという大陸移動説を提唱した。大陸移動の証拠としては,大陸間の地質構造のつながり,
氷河の分布,化石による古生物分布などがあげられた。しかし,大陸移動の原動力を説明できなかったこと
などから,広く受け入れられなかった。しかし,その後,ヨーロッパ大陸と北アメリカ大陸での古地磁気の測定から,
大陸毎に推定される磁極移動曲線が異なり,
両大陸が大西洋を挟んで広がるように移動したと考えられることが明らかになった。
さらに海底の堆積物の年代や,海底の地磁気の縞模様から,海洋底が海嶺を軸として両側に拡大していることが
分かった。これらの事実を説明するモデルとして,地球表層が,相互に運動するいくつかのプレートで覆われ,
その境界で主要な変動がおきているというプレートテクトニクスの理論が確立した。現在では,精密な測量により,
プレートの動きを直接測定することも可能になっている。
- 配点と採点基準
(1)12点。現象6点。理由6点。
(2)13点。充分な解答はなかったため,正しい記述に対し加点法で採点。大陸移動説のみの説明だと最高7点。
- 問5
- 解答例
まず最初にけつ岩が形成された。次にそのけつ岩は,花崗岩の貫入を受け,それによりけつ岩が花崗岩に接触した部分は変成されてホルンフェルスとなった。これらの岩石は隆起し浸食され,その後再び沈降し,水中でれき岩,砂岩,泥岩が順次堆積した。つぎにこれらの岩石に安山岩の岩脈が貫入した。さらにそれらを切る断層が形成された。その後,再び浸食を受け,さらに水中に沈降し,れき層,砂層が堆積した。
- 配点と採点基準
25点。十分な解答はなかったため,各イベントの読み取りに対して,原則として各3点で加点法で配点。
内容により一部加点。順序の間違いは程度の応じて減点。
- 問6
解答例
- (1)古生物,特に動物種の著しい変化にもとづく。
(2)[例]三葉虫:古生代,アンモナイト:中生代,デスモスチルス:新生代 など
(3)地球の原始大気は二酸化炭素を主成分とし,少量の窒素,硫化水素などを含み,遊離した気体としての酸素分子は
ほとんど含まれていなかったと推定される。それが現在のような大気に変化した主な要因は,光合成をおこなう生物が出現し,二酸化炭素をとりこんで酸素を放出したことであると考えられる。
- 配点と採点基準
(1)6点。
(2)3点×3。示準化石として適切な化石が挙げてあり,時代が代のレベルで一致していれば可(減点なし)とした。
時代が一致していても示準化石として不適切な場合(産出が稀,など)は減点。
(3)10点。二酸化炭素に富んだ大気から,光合成により酸素が形成された,というシナリオが表現されていればよい。
各問毎および合計の統計
|
平均点 |
最高点 |
最低点 |
選択率 |
問1 |
19.97 |
25 |
0 |
73.68 |
問2 |
10.59 |
22 |
0 |
73.68 |
問3 |
15.82 |
25 |
4 |
69.47 |
問4 |
10.94 |
25 |
0 |
51.58 |
問5 |
12.34 |
23 |
2 |
46.32 |
問6 |
19.34 |
25 |
3 |
76.84 |
合計 |
60.20 |
95 |
14 |
391.58 |
(注)選択率の合計が400%にならないのは,3問しか解答しなかった人がいるため。
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Minoru SASAKI
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