2007年度の卒業研究で,奥寺さん,工藤さん,小関くん,白石くん,高田さんの5人は,G.ブロム,L.ホルスト,D.サンデル『確率論へようこそ』森真 訳 シュプリンガー・フェアラーク東京 をテキストにして,ランダム・ウォーク(乱歩,酔歩)の研究をしました。
 ここで紹介する話は,この5人の卒業研究の一部です。

 X軸上の整数点の上を,等しい確率で右または左の点へ移動するランダム・ウォークを考えます。今,図のように3点O(0),A(-a),B(b)があり,点Oを出発したランダム・ウォークが,点AまたはBに達したとき止まるものとします。
 Oを出発したランダム・ウォークがAで停止する確率をP(A),Bで停止する確率をP(B)と書くことにします。確率P(A),P(B)はどんな値をとるのでしょうか?
 この値は,線分OA,OBの長さに関係するように思われます。また上の図では,Aの方が出発点Oに近いので,P(A)の方がP(B)より大きいように思えます。実は,

P(A)= OB = b , P(B)= OA = a
AB a+b AB a+b

となります。
 さらに,AまたはBで停止するまでのランダム・ウォークのステップ数をNとすると,その期待値E(N)は

E(N) = a・b

となります。

 この様子を,下のモデルでためしてみましょう。
 STARTを押すと,ランダム・ウォークはスタートします。a=2,b=4ですから,

P(A)= 2 , P(B)= 1
3 3

です。A,Bそれぞれに達する相対頻度が,この値に近づく様子がたしかめられましたか?

 原点Oから,3本の放射線OA,OB,OCが伸びており,OA上にはa個,OB上にはb個,OC上にはc個の点がある図を考えます。
 この図の上を,原点を出発したランダム・ウォークが,放射線の端の点AまたはBかCに達したとき,停止するとします。ランダム・ウォークが,端点Aで停止する確率P(A)を求めてみましょう。

(A) 第一歩で,OA上の最初の点に移った場合を考えます。
 その後,このランダム・ウォークは,どうなるのでしょうか。
 直線上のランダム・ウォークの結果を使えば,この後,…

1) 確率 1 で端点Aに達し,これで「上がり」となります。
a
2) 確率 a-1 で原点Oに達し,この場合「振り出しに戻る」ことになります。
a
(B) 第一歩で,OB上の最初の点に移った場合は…
 同じように直線上のランダム・ウォークの結果を使うと,

 1) 確率 1/b で端点Bに達し,ここでランダム・ウォークは停止してしまい,Aに達することはありません。
 2) 確率 (b-1)/b で原点Oに達し,この場合「振り出しに戻る」ことになります。


(C) 第一歩で,OC上の最初の点に移った場合…
 このときは(B)と同じですね。

 (A),(B),(C)はいずれも1/3の確率でおこるわけですから,P(A)は次の式を満たします。

P(A) = 1 { 1  + a-1 P(A)}
3 a a
+ 1 { 1 x 0 + b-1 P(A)}
3 b b
+ 1 { 1 x 0 + c-1 P(A)}
3 c c

これから
P(A) = 1
a
1 + 1 + 1
a b c

となります。
 B,Cに達する確率P(B),P(C)も同様に
P(B) = 1 , P(C) = 1
b c
1 + 1 + 1 1 + 1 + 1
a b c a b c

となります。
 端点で停止するまでのステップ数Nの期待値E(N)は
  a + b + c
E(N) =
  1 + 1 + 1
a b c

となります。
 では,次のモデルでためしてみましょう。
 a=2,b=3,c=4ですから,
P(A) = 6 = 0.461…
13
P(B) = 4 = 0.307…
13
P(C) = 3 = 0.230…
13
E(N) = 108 = 8.307…
13


 より詳しい話は,
 G.ブロム,L.ホルスト,D.サンデル『確率論へようこそ』 シュプリンガー・フェアラーク東京 第1章と第10章
 または,小関君のレポート(http://www.st.hirosaki-u.ac.jp/~mathsci/m200806/random.pdf)を参照してください。