月刊ホームページ2008年1月号 担当 有賀義明

忘れた頃に必ずやって来る大地震と防災


「天災は忘れた頃に来る」

 この言葉は、寺田寅彦が言い始めたものと言われています。
 寺田寅彦は、明治29年(1896年)に旧制の第五高等学校(熊本)に入学しましたが、その当時、高校に英語教師として来ていた夏目漱石と出会い、それが大きな縁となり、後世、寺田寅彦は、夏目漱石門下の随筆家として有名になりました。しかし、寺田寅彦の本業は、東京帝国大学の物理学の教授であり、今から100年以上も前に地震防災の重要性を説いていました。ちなみに、夏目漱石の小説「吾輩は猫である」に出てくる水島寒月のモデルは、寺田寅彦と言われています。

「防災」

 防災という言葉は、新しい現代用語のような感じがしますが、実は昭和10年(1935年)に「防災科学」(岩波書店)という本が出版されており、かなり歴史のある用語です。「防災科学」の著者も寺田寅彦ですが、その先見性が感じられるように思います。

「地震防災の主役は市民の一人ひとり」

 地球で発生している地震の約15%は日本で発生しています。世界有数の地震被災国である我が国では、地震は不可避の現象であり、大地震が発生した場合は老若男女を問わず誰もが地震災害に巻き込まれる危険性があります。地震は、いつどこに来るかは定かには分かりませんが、忘れた頃に必ずやってきます。自然災害に対して、往々にして、「まだ大丈夫」「自分だけは大丈夫」と思い込んでしまいがちですが、地震防災の主役は市民一人ひとり。一人ひとりが、地震から自分や家族をどう守るか、自分が住んでいる家は大地震でも大丈夫か、通学や通勤の経路は安全か、学校や職場の施設は大丈夫か等を考え、いつ地震が来ても良いようにしておくことが必要です。「自分には地震なんか関係ない」「そんなの関係ねぇ」では万が一の時に大変かも知れません。


地盤や構造物の耐震性能照査

 地震災害の様相や程度は、地震の揺れ、地盤の軟らかさ、構造物の耐震性、都市の特性等によって大きく変化します。理想的には、地震の少ない所に住み、地盤の良い所に住み、耐震性の優れた家に住み、人口や家屋の密度が適正で安全な都市に住むことが望まれます。しかい、我が国では、大地震がない場所はなく、いつどこで大地震が発生してもおかしくないため、現実的には、地盤や構造物の特性を考慮して、個々の構造物や都市施設の耐震性能を照査して、必要な場合には、適正な地震対策を講じるなどして、地震に強い生活環境、都市環境を創り出して行くことが大切になります。下に示した図は、地盤と構造物の水の地震時相互作用を考慮した三次元動的解析法の適用事例の1つですが、こうした三次元動的解析を活用することによって、既設構造物等の耐震診断を適正に行うことが可能になります。

緊急地震速報を活用した地震防災技術


 2007年10月1日から、気象庁より緊急地震速報の一般提供が開始されました。緊急地震速報は、(独)防災科学技術研究所と気象庁がそれぞれ開発した、即時的な震源情報(マグニチュードと震源位置)の評価決定技術を統合的に活用することによって、震源から少し離れた地域に対して大地震時に揺れが到達する前に地震の発生あるいは予測される震度等を配信しようとするものです。緊急地震速報は、大地震の際の直前情報として、これからの地震防災に役立つ情報として期待されています。緊急地震速報の活用を時間軸の上で考えて見ると、大きく、平時、地震直前、地震直後に分けて考えることが可能です。平時の活用としては、平素からの防災意識の啓発・向上、防災教育・訓練、耐震診断・耐震対策、事業継続計画への反映等に役立てることが可能です。地震直前の活用としては、直前の心構え・安全確保・避難行動、設備の自動制御等に役立てることが可能です。更には、地震直後に対しても、地震直後の臨時点検の効率化、安全確認の迅速化と被害情報等の発信の適正化、余震への活用、二次災害の未然防止への活用等が可能です。  緊急地震速報の本来の目的は、「地震動到達前の数秒〜数十秒」の人的被害の未然防止への活用ですが、大地震がいつ来ても良いような生活環境、都市環境を実現しておくためには、地震動到達直前のみならず、「地震発生前の数年〜数十年」における耐震診断・地震対策の実施、地震防災の啓発・訓練・教育が大変重要です。 忘れた頃に必ずやって来る地震がいつ来ても良いような、心理環境と施設環境を実現しておくことが地震防災の実現には必要不可欠です。


大地震への備え

 大地震に対しては、個人・家庭、組織・企業、自治体、国などの様々なレベルでの取り組みは必要です。

第一:個人レベルの生き残り:家屋、家具

    自分や家族が、地震の犠牲者にならないようにする。

第二:組織レベルの生き残り:自社設備、二次災害

    企業が、地震の直接被害や間接被害で倒産しないよう
    保有設備の耐震性向上や二次災害防止策等を講じる。

第三:自治体レベルの生き残り:防災計画、都市計画

    市民が、安全で安心な生活を継続的に送ることが出きる
    よう、実効的で合理的な地域防災、都市防災を推進する。

第四:国レベルの生き残り:首都機能、経済損失

    国が滅びないように、地震に強い都市/国を整備する。
最後に "ぼうさい"諺十ヵ条(有賀義明選)
忘災に関連する五つのことわざ
      1.天災は忘れた頃にやってくる
      2.喉もと過ぎれば熱さ忘れる
      3.知らぬが仏
      4.盲目、ヘビ(なまず)に怖じず
      5.今日は人の身、明日はわが身
防災にまつわる五つのことわざ
      6.地震、雷、火事、おやじ (日本固有)
      7.備えあれば憂いなし
      8.転ばぬ先の杖
      9.君子危うきに近寄らず
      10.防災の最大の敵は忘災 (選者)



関連リンク

気象庁 http://www.jma.go.jp/jma/index.html
気象庁 緊急地震速報 http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/EEW/kaisetsu/index.html
内閣府 防災情報 http://www.bousai.go.jp/
内閣府 中央防災会議 http://www.bousai.go.jp/chubou/chubou.html
文部科学省 高度即時的地震情報伝達網実用化プロジェクト
        http://www.bosai.go.jp/kenkyu/sokuji/index.htm
文部科学省 地震調査研究推進本部 http://www.jishin.go.jp/main/
独立行政法人防災科学技術研究所 http://www.bosai.go.jp/
特定非営利活動法人リアルタイム地震情報利用協議会 http://www.real-time.jp/
緊急地震速報利用者協議会 http://www.eewrk.org/