津軽半島南部に分布する"二本松凝灰岩部層"について

 

根本直樹・高平康司,2002,弘前大学理工学部研究報告,vol. 5, p. 17-30.


はじめに

 本論では"下部"および"上部"二本松凝灰岩部層に対する岩石学的検討を目的とし,両部層の記載を行うとともに,重鉱物分析およびEPMA分析を行った.

 

地質概説

 調査地域の新第三系は西部ではNW-SE方向,東部ではNE-SW方向の走向を示し,南に傾斜する.

 

 

 

 

 

 これらは下位より馬ノ神山層,源八森層,不動滝層および味噌ヶ沢層に区分される .

 

 

 

 

 

 

 

 

試料および処理方法

 ルート1においては,金木凝灰岩部層および二本松凝灰岩部層が連続的に観察され,このルートに沿って採取した6試料を分析に用いた. 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果

重鉱物分析

 金木凝灰岩部層の重鉱物組成は,下部と中部および上部との違いが明瞭であり,下部から上部にかけて単斜輝石および斜方輝石が減少し,角閃石,黒雲母,磁鉄鉱およびチタン鉄鉱が増加する.

 二本松凝灰岩部層の重鉱物組成は,下部から上部にかけて黒雲母が増加し,角閃石,単斜輝石,斜方輝石,磁鉄鉱およびチタン鉄鉱が減少する.

 

 

 

 

 

 

EPMA分析

 金木凝灰岩部層のSiO2の組成幅は73.99〜78.95%と広く,ハーカー図上ではSiO2の増加に伴い他の元素は減少するほぼ一連のトレンドを持つ.CaOのハーカー図においては,本部層中部および上部の領域からなるトレンドと下部の領域からなるトレンドに分けられる.

 二本松凝灰岩部層のSiO2の組成幅は77.57〜79.66%と狭く,SiO2の増加に対し他の元素はほとんど変化しない.

 平均値に基づくと,金木凝灰岩部層と二本松凝灰岩部層は明確に区別される.特に,TiO2,FeO*,MgOおよびCaOは,金木凝灰岩部層が二本松凝灰岩部層に比べ約3〜5倍の値を示し,逆にK2Oは二本松凝灰岩部層の約1/2の値を示す.

 

結論

 本研究より以下の結論が得られた.

氈D不動滝層下部二本松凝灰岩部層を同層金木凝灰岩部層に,味噌ヶ沢層金木川異常堆積層を同層金木川砂岩部層に,味噌ヶ沢層上部二本松凝灰岩部層を同層二本松凝灰岩部層に,それぞれ改称した.

.不動滝層金木凝灰岩部層と味噌ヶ沢層二本松凝灰岩部層は,重鉱物組成およびガラスの化学組成から区分された.また,両部層中に重鉱物組成の層位的変化がそれぞれ認められた.