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理工学部 月刊ホームページ 1月号

地球環境学科 地圏環境学講座

 山や岩石は動じないものの例えにされることがありますが,地球形成時から長い時間にわたっておこなわれた壮大な活動の一部です.固体地球の物理的・化学的性質が様々な分野が互いに関連しながら,全体的な構造や活動が研究されています.上の岩石は堆積した泥や砂が地下深く(だいたい10kmぐらい)に持ち込まれ,変成作用を受けたものです.地下深く穴を掘って採取したのではなく,それまでこの岩石の上にあったものが削られて地表に露出していたものです.

 固体地球は半径約6400kmのほぼ球体で地殻・マントル・コア(核)からなっています.地殻は地球表層を覆う厚さ数km〜数十kmの層であり大陸地殻および海洋地殻があります.地殻から深さ約2900kmまではマントルがあり,上部マントル(〜約400km),漸移層(〜約1000km),下部マントル(〜約2900km)に分けられます.コア(核)は深さ約2900〜5100kmに液体の外核(と中間層),以深には固体の内核があり,中心に向かうほど密度がおおきくなる構造を持っています.地表から内部へ調査を進めようとしたとき,最も明快な発想は穴を掘ってみることだと思われますがマントルまで掘り進んだ例はありません(掘ったとしても地殻内でも数百度,マントルでは千度以上の高温になります.地球ができたときからの熱のほか放射性元素にもよります).つまり,地球の内部を直接見てきた人はいません.見てはいませんが物質の物理的な性質を利用して調べています.上記の構造は地震波の(深度方向の)速度構造に基づいて分けられました.温度や密度は場所や物質の違いによって変わるため,深さ方向と水平方向について地震波の速度構造を求め3次元的な内部構造を調査し(トモグラフィー),マントル内での対流,プレートとの関わり(例えば沈み込む海洋プレートの行方)など地球内部全体の運動について明らかにしようとする研究が進んでいます.ほかにも物質の物理的性質を利用して地球内部を調査する方法には重力探査,磁気探査,電気探査などがあり,資源探査など様々な用途に用いられています.

 目に見える,手に届く範囲でもいろいろな場所にいろいろなものがあります.当然,いろいろなことが起きているためいろいろな原因があります.たとえば岩石を採取した場合,構成鉱物の種類・形・量比,岩石の組織,化学組成などいろいろなことが調べられます.火成岩の種類と構成する鉱物を語呂合わせで覚えた方もいらっしゃると思いますが,実際もっといろいろな岩石があります.特定の元素が富んでいたり枯渇していたりする,同位体の比が異なるなど特徴的な化学組成は岩石の起源などの情報を与えてくれます.多くの岩石の組織から変形の履歴を探って構造運動を調べることもできます.岩石は堆積岩・火成岩・変成岩と大別され,それぞれいろいろな情報を得ることができます.あまり見ないと思われる変成岩は,岩石(砕屑物や堆積岩・火成岩・変成岩などでもとにかく)が地下深くに持ち込まれるなどして温度や圧力などの条件が生成した条件から変わることによって,化学反応が起こり化学組成が同じ岩石でも新しい鉱物ができるなど鉱物の組み合わせや量比がほとんど固体状態のままで変化した岩石です.高温になると岩石が部分的に融解して花崗岩質の物質がつくられ,移動してある種の花崗岩をつくると考えられています(上の岩石はこれを調べるために採取されたもの).また,鉱物の中には石墨とダイアモンドの関係のように結晶でも組成は変化せずに構造が変わる(相転移という)ことあります.火成岩の貫入によって熱せられて起こることも地殻の中で大規模に数千万年に及ぶ時間をかけて起こることもあり,岩石が経験した温度・圧力・化学組成・岩石中の流体などによって様々なものがあります.鉱物の化学組成や組み合わせの変化,年代測定から岩石がたどった温度・圧力・時間の経路,変形の履歴などのデーターがうまくそろえばテクトニクスとあわせて地域の歴史を明らかにすることができます.

 

地質調査実習中の一幕.右手に持っているハンマー(長さ約30cm)の下の地層はきれいに成層しているがそれと比べて上の地層は構造が乱れている.おそらく,手元の部分は上位の厚い礫層が堆積して荷重がかかったため,粒間に水を多く含んでいた下位の礫層が吹き出した脱水構造ではないかと思われる.写真をクリックすると手元の拡大部分があらわれます.ブラウザのBackボタンから戻ってください.

 多方面から多くのデーター得てそれらを関連させながら地球の姿を理解しようとするには分析機器やコンピューターなど普段接することの無い道具がたくさん使われています.だからといって地球自体は縁遠くありません.たとえば石油などの地下資源は日常生活を支えていますし,ちょっと野外に出てみれば,そこには長い時間とスケールの大きい運動の結果であふれていていて,手軽にかつ身近なところで自然の偉大さを感じることができます.博物館で化石や岩石を見ることもできますし,河川などによって地面が削られてあらわれる露頭(地層,岩石などが露出しているところ)をいくつも見ていくとその地域に起こった構造運動や過去の環境などの歴史をかいま見ることができます.専門的なことを考えなくてもきれいに曲がっている地層を見れるかもしれませんし,断層などの運動のすごさに感動できるかもしれません.また,何気なく手に取った石や鉱物がどこからきてどうしてできたのかを考えることもできます.賑やかな世界だと思うのですが,いちど御覧になってはいかがでしょう.

文責.中川希人

(訂正は下記のアドレスまで)

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