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ファラデーの電磁誘導の法則によれば、導体が磁場の中を運動すると起電力が生じ、電流が流れます。この物理法則は広い分野に応用されており、人工的な磁場の中でコイルを回転させて発電する発電機がその代表例です。地球はひとつの巨大な磁石であり、しかも海水は導体ですので、ファラデーの法則が成り立ちます。海水が流れると地球磁場の磁力線の鉛直成分(右図中Fz)を横切りますので、海流の強さに比例した起電力(右図中E)が生じます。
海流による起電力はどこでも測定できるわけではありませんが、津軽海峡では(株)NTTの海底電話線を使用させて頂いて測定が可能になりました。右図(b)は概念図ですが、津軽海峡では測定位置が逆になります。電圧の測定値(10分間の平均値)は一旦パソコンのディスクに記録され、真夜中に電話回線を使って弘前大学の研究室のパソコンに電送されます。全てが自動的に行われています.
<海底ケーブルを使って海流を測る原理
Flosadottir et. al., 1997, J. Phys. Oceanogr. より>
以前は海底の電話線は同軸ケーブル(テレビとアンテナを繋ぐケーブルに類
似したもの)でしたが、現在はほとんど光
ファイバーケーブル(左図)に置き換えられています。それは光ファ
イバーケーブルは一度に多量の情報を送ることでき、しかも信号の減衰が少な
いからです。写真でケーブルの芯の部分が光ファイバーですが、
ガラス質であるため電気を通しません。私たちは光ファイバーを覆っている外側の銅色導体部分(管状)を使って北海道側と青森県側の電位差(海流による起電力)を測定しています。津軽海峡の場合、北海道側が青森県側よりおよそ0.2V電圧が高くなっています。
電位差は地磁気の変動によって乱されるため,荒木喬
教授製作の磁力計で地磁気の変動も同時に測定しています。
<光ファイバーケーブル (NTT TE東北)>
津軽海峡は日本海から三陸沖に向かう津軽
暖流と満ち潮・引き潮にともなって生じる潮流が流れています。
海流や潮流が強まると地球の自転効果のために青森県側と北海道側の水位差も強まります。下図は1995年5月の福島(北海道)−今別(青森県)間の電位差と竜飛−吉岡間の水位差を比較したものですが、両者の対応関係が非常に良く、潮流の時間変化が捉えられています(位置関係は右図参照)。従って、津軽海峡の海潮流の変動は北海道−本州間の電位差を測定することによってモニタリングが可能であることがわかりました。
追記: 2005年現在この観測は弘前大学で行っていません。
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