分子分光学 (20240527)
M: 以下は宮本のコメント
質問カードには「良い質問」を書くのであって, ふと思いついた疑問や教科書を読んでいてあなたが理解できなかった点についての質問を書くのではない.
- 21S2020:
- 表現行列を作るの時のオブジェクトはなんでもいいのですか
M: 講義では ``オブジェクト'' と何となくごまかしたような言い方をしましたが, それのことを ``基底 (basis)'' または ``基底系 (basis set)'' と呼びます。対称操作による変換後のものを基底系で表現できる必要はあります。 //
``基底系'' とは, たとえば, 三次元空間内の任意のベクトルをその三次元空間における xyz 方向の単位ベクトルの線形結合で表すことができるときの, その単位ベクトルの集合のこと。その基底系が空間を張ると言います。
この ``空間'' は幾何学的な空間だけでなく, ``関数空間'' というのもある, 抽象的な話だが (フーリエ変換などと言ってみるテスト)。
- 22S2014:
- それぞれの可約表現について、どの規約表現を含んでいるかどうかはその表現の特徴などになんらかの寄与を与えるのでしょうか?
M: (1) 水分子の二つの水素原子の 1s オービタルから, C2v 点群の既約表現に属する群軌道をつくる。
(2) 水分子の酸素原子の三個の 2p オービタルが属する既約表現を求める。
あるいは, 分子の xyz 方向の並進運動の属する既約表現を求める。
(3) 水分子の基準振動解析 (分子内振動の属する既約表現を求める)。
(4) シスブタジエンの最低エネルギーのπオービタルの属する既約表現を求める。同様にして他のπオービタルの属する既約表現を求める。
これらの応用として:
(1, 2前半) 水分子における酸素原子と水素原子との間の結合についての理解 (分子オービタル);
(2後半, 3) 水分子の基準振動解析 → 分子内振動 (赤外線吸収スペクトル・ラマン散乱スペクトル);
(4a) ディールス・アルダー (Diels-Alder) 反応の立体化学における熱反応と光反応
ペリシクロ反応の立体化学や熱反応・光反応の反応性 (20240606 修正)の違いの理解 (共旋的, 逆旋的);
(4b) 光吸収・発光の遷移における選択律 → 電子遷移 (紫外可視吸収スペクトル, あるいは蛍光・りん光スペクトル)。
rmiya, 20240606