分子分光学 (20200511) M: 以下は宮本のコメント
14s3005: 
講義では5種類の対象操作が登場しましたが、並進操作は点群に属さないのでしょうか。 ある分子の対象要素を見つける際、分子の動き(単結合の自由回転など)は考慮しなくてよいのでしょうか。それとも、対象要素を見つけようとするとき、分子の構造は動いていないことを前提としていますか。 M: 並進の操作をほどこすと分子の重心の位置が動いてしまい, 動かす前の配置とピッタリ重ならない. // 結晶の対称性に関して, 空間群というものもある. // 対称操作をほどこしている最中に分子が変形してしまう (原子間の相対配置が変わってしまう) のなら, 操作する前とピッタリ重なることなどなくなってしまうのでは?

16s2008: 
・回映において奇数が存在しない理由は何か。 ・選択律が分子の形に依存するのはなぜか。 M: スミマセン, 回映操作については説明が一部間違っていました. もし $ \DS S_1$ を考えるとすれば, それは $ \sigma$ だし, $ \DS S_2$ を考えるとすれば, それは $ i$ である. よって $ \DS S_n$ を考えるときには $ n \geq 3$ である. また $ n$ の偶奇によって, 少し振る舞いが違う. // 遷移モーメント積分がゼロかゼロでないか (遷移が禁制か許容か) は, 被積分関数の偶奇性から容易に判定できる. 被積分関数には, 当然, 分子の波動関数が含まれており, 波動関数は量子力学系に関して得られる全ての情報を含んでいると言える (仮説1, p.126). したがって, 分子の持つ物性が分子の形に依存しているという事実は, 分子の波動関数が分子の形に依存しているということに由来する.

16s2019: 
対象要素[原文ママ]の記号は統一した方が分かりやすいかと思うのだが、二種類に分ける合理的な理由はあるのか。 M: 初めから同種のものを複数作っておいて, それらを適宜分けて使おうなどと考えるだろうか? それぞれが自分たちに都合の好さそうな方法を考えただけでは? // なぜ英語と日本語は (さらに多くの言語は) 分かれて存在するのか? 統一した方が便利だと思うが?? // 歴史・科学史を勉強すればいいのでは??

16s2043: 
対称操作について、水分子の水素原子の一方が同位体の重水素の場合、対称要素に変化はありますか、ある場合どのような変化がありますか。 M: あなたが何に着目するかによるのでは? // 原子核の質量の別を問題にするなら, 軽水素と重水素は別物なので, H と D の場所を入れ替えれば, そればもう元とは区別がついてしまう. しかし原子核の質量を問題にしないなら (例えば電子だけに注目し, 原子核は正電荷を与えるだけと考えるなら), 二つの水素原子の位置の交換は (電子の運動に影響をおよぼさないので), 交換の前後で区別がつかないと言えるのでは?

17s2001: 
光と物質の相互作用について、吸収、放出、散乱、反応以外の現象は起こりえますか?また、上記の四つの現象は同時に起こりえますか? M: 講義では典型的なもの・代表的なものを示しただけで, 全てを網羅したわけではないし, 未発見の現象が存在する可能性をも考えれば, そんなことは不可能だ. // 他にどんな現象があるか, 複数の現象が同時に起こり得るのか, 自分で調べて考えればいいのでは?

18s2003: 
恒等要素Eをなぜ対象要素に入れる必要があるのでしょうか。入れないことによって生じる不都合には、どんなものがありますか。 M: 18s2018 参照

18s2016: 
郡論を分子に適用することは、分子の構造を行列という形に置き換えて、立体的な操作を数学的なものに置き換えて行ったり、分子の立体構造の性質を観察する為のもの、という理解で良いのでしょうか M: 難しそうな言葉を連ねて何かすごいことを言っているつもり・格好つけているつもりなのであれば, そんなものは素人に虚勢を張るだけで, 正しい理解の邪魔にしかならないでしょう. // この後で学ぶ予定ですが, 対称操作の集合が群を成し, また集合の要素を行列で表現するのです. つまり原子の位置を動かすという操作を行列で表現します. これは数学的には単なるベクトルの一次変換 (座標変換, 直交変換) にすぎません. そう言ってしまえば, 既修の数学の知識をここで使っているだけです. 小難しいことやエライことなど, 何一つありません.

18s2018: 
他の要素は分かったのですが、動かさないという要素がよくわかりませんでした。動かさないことで得られるものとはなんでしょうか。 M: $ \times 1$$ + 0$ で得られるものとは何か? // 数の集合に対する乗法で 1 という要素, 加法で 0 という要素の必要性は? これらが存在しないことによる不都合は?

18s2021: 
光学異性体が満たす対象操作[原文ママ]はEとCnのみですか? M: 用語は正しく使いましょう. ``光学異性体'' とは何か? ``対象操作'' とは何か? // 前者が ``鏡像異性体'' の意味だとして, それは, ある分子の鏡像が元の像と重ならないときに, 両者を鏡像異性体の関係にあると言う. すなわち例えば, L-アラニンと D-アラニンは鏡像異性体の関係にあるという. さてこのとき, 「鏡像異性体 (つまり対を成す二つ一組の分子) が満たす対称操作」とは, 何の事だろうか? あなたが言おうとしていたことって...??

18s2045: 
回映操作においてのSn(n$ >=$4)、nが偶数と定義されることについて、 nが偶数条件になるとはっきり言いきれる理由とはどのようなものでしょうか? M: ``定義'' という言葉の意味を理解していない? // 「``定義'' とは, ある語の意味を, 他と区別できるように明確に限定すること」 なので, 質問に対する直接的な答えは, 「(はっきり言いきれる理由は) そのように定義したから」 に尽きる. // スミマセン, 回映操作については説明が一部間違っていました. 16s2008 参照

18s2051: 
対称要素の種類や数と、分子の性質にはどのような関係がありますか。 M: まさにそれが, 点群の種類を決めるわけで, 分子がどんな対称性を持つかを表している. 例えば CO$ _2$ は反転 i を持つが, H$ _2$O は持たないことが, それぞれの分子が双極子モーメントを持つかどうかと関係している.





rmiya 平成32年5月18日