構造物理化学 II (20160120)
M: 以下は宮本のコメント
- 14s3001+:
-
に極小点が存在し, そこで化学結合が形成されたとありましたが, 普段有機化学の授業で扱っている分子の核間距離は極小点のときの値で扱っているのですか? M: 先に本章の話の流れを, 水素分子イオン
H
から多原子分子の特定の二原子間の結合へと展開すると紹介しました. 忘れられてしまって残念です.
- 14s3002:
- ボルン-オッペンハイマー近似において, 核と電子の質量の大きな違いから, 核の運動を無視する近似ですが, このときの質量の差から違う近似の方法は生まれなかったのでしょうか. M: 私は知りません, 調べてわかったら, 教えてくださいネ. または, あなたが新たに考え出しても良いですね(!)
- 14s3003:
- 図9.6 について
が解離しているのが安定と仰ってたのですが, なら
が大きくなるにつれて, 結合するためにはエネルギーが必要なので結合させないためにも
が増大するにつれて,
も増大すると思うのですが, 何故減少するのですか? M: 勘違いでしょう. //
が大 → 結合するためにはエネルギーが必要(
) → 結合させることは難しい → 結合させないことは簡単 →
エネルギーは減少 // (
) エネルギーの符号が逆.
では結合によりエネルギーが解放され, 逆に
ではエネルギーが必要.
- 14s3005+:
- 非結合オービタルだけ式として登場しなかったのは, オービタルとしての性質に他 2 つに比べて異質な部分があるからでしょうか. // H 原子同士のキョリが小さくても, 偶然原子の間に電子が存在しなくなり, 結合が切れることはあるでしょうか. 物体の運動が変化する時, 力はどの段階ではたらくのでしょうか. M: 違います. 単に 水素分子イオン
H
では非結合軌道が形成されないだけ. という説明を講義中にしたのに, 伝わっていなくて残念. 14s3040 も参照 // もっぱら定常状態の話をしているので, 原子間に電子が存在しなくなる (これまで存在していたものが, ある時突然いなくなる) という現象は考慮の範囲外. 時間に依存する摂動を受けて
の状態から
の状態へと遷移が起これば, それは分子内の電子密度分布の変化が起こったことに相当する. // ニュートン力学では, 遠隔でも力は瞬時に伝わることになっているが, 相対論的世界観の元では, 力の伝搬には光速度の上限がある. で, 物体に力が作用すれば加速度を生じるという
という等式が成り立たない瞬間を考えることはできるのか(?)
- 14s3006:
- 今回は, 二原子分子の化学結合を量子力学によって考察しましたが, 例えば B
H
などの対称性のある分子では群論を用いて量子力学的に化学結合を説明することができるのでしょうか. M: 群論を用いるかどうかにかかわらず, 自然現象・物理現象はそこに存在している. 群論を用いれば, 自然を理解する私たちの視点が変わるだけ. もしも群論を用いずに現象を説明できるのなら, 群論を用いて (より簡単明瞭に) 説明できることだろう.
- 14s3007:
- クーロン積分や交換積分は式を分かりやすくしていると考えたのですが, 他の意味はありますか? M: 自分で考えればいいのでは(?) さらに先を学べば分かるのでは(??)
- 14s3009:
はある状態とある状態の分子のエネルギーの差であると考えましたが, このエネルギー差が正にも負にもなるのは, 基準となるエネルギーが存在するからですか. M:
と
は, それぞれどういう二つの状態間のエネルギーの差なのでしょうか?
- 14s3010*:
- 理論値と実験値の間で,
結合 は約 100 kJ mol
, 結合長は 30 pm 程度の誤差があるようなのですが, この誤差が出ている要因は何なのでしょうか. また, この誤差を補正するとしたら, どのように式を変えればいいのでしょうか. M: すぐに思いつくのは, Ritz の変分法の範囲内で誤差を補正する方法ですネ ;-)
この論理では, 1s では不十分だということを意味する. これにより改善されたものを見れば, 具体的な誤差の原因の一端がわかるのでは(?) また別の視点として, VB 的には, どのような極限構造の寄与を考慮に入れていないか?
- 14s3012:
- 分子軌道法では試行関数に用いる原子オービタルによって分子オービタルとエネルギーが決まると教科書にありましたが,
にどんな値を用いるかのエネルギーと波動関数への対応は, 具体的にどのような
の値で良い見積もりを得られるのですか? M: 質問文の意味がわかりにくい. 水素の 1s 原子オービタルを試行関数に用いた場合の
とエネルギーの関係が, まさしく図9.6 でしょう. ここから
の最適値がわかるのでは? // ``用いる原子オービタルによって'' については 14s3010 も参照
- 14s3013:
- H
において, ハミルトン演算子がスピンに依存しないのはなぜか. M: (9.4) 式を見れば自明では(?)
- 14s3015:
-
H
以外にも対称性があれば多原子分子などでもシュレーディンガー方程式を厳密に解くことができるのでしょうか. M: そりゃできるかもしれませんね. 私は具体例を知りませんけど, 調べてわかったら, 教えてくださいネ
- 14s3016:
- 式 (9.6) は一次結合を表すとありますが, 二重結合をする場合, また違った形の式になるのですか? M: 教科書のもう少し先の (9.33) 式や参考書を見ればわかるのでは(?) // 一次結合と二重結合が同じ文中で対比的に用いられていることの意味は何だろう?
- 14s3017:
の増加に伴う結合の安定化に例外はあるのでしょうか. M: そもそも ``
の増加に伴う結合の安定化'' とは, 何のことか?
- 14s3018:
- 授業で, 非結合性オービタルの波動関数とエネルギーもあるとおっしゃってましたが, 非結合性はそもそも電子が入っていないので, 波動関数とエネルギーは求められないと思ったのですが, どうなんですか? M: 勘違いでしょう. 電子 (粒子) が取ることのできる状態 (エネルギーと波動関数) が, Schrödinger 方程式を解いて得られる様子を, これまでも学んできたのでは(?)
- 14s3020:
-
には極小点があるのに対し,
には無い理由としては, どのような要因があげられるのでしょうか. M: 数式としては
と
の中身を比べて吟味する. 少しは自分で調べたり考えたりしてもいいのでは(?) // 定性的な理解として, 講義でも
と
の形を示しての説明をしたのに, 伝わっていなくて残念. あと, 図5.5, 5.6 (モースポテンシャル) の話も, 以前に聞いてるはずなのにネ
- 14s3021:
- p.361 の図9.7 において「交換積分の項に古典的に対応するものがない」とありますが, 古典的とはどういうことですか? M: 今更な質問にビックリ. // 量子力学と対峙しての古典物理学 (ニュートン力学, 電磁気学, 等)
- 14s3022:
-
H
の反結合性分子オービタル
の 2 乗である
は電子密度が 0 になっていますが そこに電子は存在していないということですか. M: 自分で判断できないのは, なぜか? // 量子力学の基礎を教科書 3 章から復習する必要があるのか(?)
- 14s3023:
- 無機で行った結合性等の話が物理化学の観点で出てきて興味深かったです. 非結合性の場合も, 今日の解法の様に解けば求められますか. M: 無機・有機に関係なく, 化学結合の理論を, 今, 勉強している所です. // 原理的には全く同じだが,
H
には非結合性オービタルは存在しないので, 求めることはできない. 残念!?
- 14s3024:
- Rits [原文ママ]の方法でエネルギーを求めた時 授業で求めたものとまったく同じエネルギーが求められるのですか. それとも偶然同じになっただけですか. M: 自分の手を動かして求めてみれば分かるのでは(?) // 波動関数の形 (水素の 1s オービタルの線形結合) が全く同じですから......
- 14s3025:
- 交換積分においては, 古典的描像がないと示されていましたが, ある場合も考えられるのですか? M: クーロン積分にはあるという話を講義でしたのですが, 理解してもらえなかったのでしょうか? 残念 // 別の場合の交換積分に古典的描像があるかという質問なら, 同じ交換積分のはずなのに, 古典的描像がある場合と無い場合の違いは何だ? ということになると思うのですが(?)
- 14s3026:
- 教科書にクーロン積分項は常に正なので
H
の化学結合の存在は交換積分によってもたらされるとあるのですが, なぜクーロン積分項が正だと交換積分が大きく影響するのですか. M: ポテンシャルの極小の存在が化学結合の存在を意味しているとの説明を, 理解していただけなかったようで残念. // 本気で真剣に考えているのでしょうか? ポテンシャルに極小ができるのは, どの項のせいなのか?
- 14s3027:
- BO 近似と変分法で求めたエネルギーと波動関数は同じものが導かれていますが,
結合 と
e の値に差は出ないのでしょうか. M: 微妙に誤解がある予感. 質問文の前半で, 何と何とが同じだと言っているのか?
- 14s3028:
-
H
について授業で求めた
と, 第一イオン化エネルギーとは違うものであるのはわかるのですが, どこが異なっているかわかりませんでした. どこが異なっているのですか? M:
は, どういう状態間のエネルギーの差なのか? 第一イオン化エネルギーとは, どういう状態間のエネルギーの差なのか? と, 基本に戻って考えればいいのでは?
- 14s3029*+:
- 近似によって求めた計算値と実験値とのずれは どのような項が不足, または影響しているのでしょうか. // 分子に拡張して考えても
が水素原子 1s のエネルギーに
を足し合わせる様なカタチになるのはどうしてなのでしょうか. M: 14s3010 も参照. // (+) ひとつには, エネルギーの計算結果を, 私たちが理解しやすいように, そのように分割したということ. ふたつめの観点としては, 水素分子イオンが水素原子と陽子からできているという見方ができるということ. などがすぐに思いつきますが, 他に何かあったら教えてくださいネ
- 14s3030:
-
は H
A の核と H
B の核の間に存在する電子の密度が比較的小さいから 2 核の外側に力がはたらき, 核 AB は正電荷であるから反発して
の値は
が大きくなるほど小さく, 軌道が安定すると考えてよいのですね? M: 講義で説明したことが伝わっていないようで, 残念. 自分で判断できないのは, なぜか? // 反結合性軌道にある状態が最安定な
は解離状態なので, それを ``軌道が安定する'' と言うのには少し違和感がある......
- 14s3031:
- 軌道が結合性オービタルでも非結合性オービタルでもなく非結合性となるのは, その軌道が他の軌道とのエネルギー差があること意外に核間距離などの影響をうけるのでしょうか? M: 意味不明. 用語を適切に使用してください. そもそも理解不十分なのでしょうか(?)
- 14s3032:
は
が無限遠となるほど低くなり, 水素原子の 1s のエネルギーに近づき, 解離した状態となると思うのですが,
が小さいときは水素原子の 1s のエネルギーとはなれるので解離した状態ではないのでしょうか. M: ``状態ではないのでしょうか'' という日本語は, ``状態である'' と ``状態でない'' の, どちらの意味か?
- 14s3033:
- 交換積分は古典的な描像がないとおっしゃっていましたが, 量子力学的にはどのように説明できるのでしょうか. M: 数式の記述に勝るものは無いと思いますが......
:-p
- 14s3034*:
- 求めたエネルギーと結合キョリが実験値とかなり違いますが, 何の影響ですか. M: 14s3010 参照
- 14s3035:
- クーロン積分, 交換積分はそれぞれ
,
と表していましたが, 「Coulomb integral」と「exchange integral」を表すのになぜ
と
が採用されたのでしょうか. //
結合 の理論値と実験値の間には約 100 kJ/mol の差がありましたが, 実験値をより小さく (理論値との差を小さく) するような実験の工夫はありますか. M: 採用した人に聞けばいいのでは(?) // そもそもどういう実験を行ったか, 私は知りません. この様な小さい分子に関して, 現在の実験技術で, それほど大きなエラーが出るとは思えませんが.
- 14s3036:
- 試行関数として, LCAO 近似をもちいていましたが, これまでに習った他の方法でも解くことができるのでしょうか. また, 二次結合として考えるとどのように近似するのですか. M: せっかく習ったのですから, 自分で挑戦してみてはいかがでしょうか(?) // ``二次結合'' とは, 何ですか?
- 14s3037:
-
,
であり,
,
,
の値によっては
の値の方が大きくなることも考えられるように思うのですが, そのようなことはありうるのでしょうか. M: それぞれの積分の値が完全に任意であれば, そうなるかもしれません. しかし, それぞれの積分は
の関数として (9.11), (9.23), (9.24) のように与えられます.
- 14s3038:
- クーロン積分, 交換積分について物理的な意味はどのように表すのですか? M: 講義で説明したのが伝わっていなくて残念. 教科書や参考書を読んで考えればいいのでは(?) // 前者は電子の核によるクーロンポテンシャル. 後者には古典的な描像がなく, あえて言えば数式による記述以上に正確なものはない.
- 14s3039:
- 混成軌道の場合, 分子オービタルの節の数は変わるのでしょうか. M: 何を基準としての ``変わる'' という話か? 自分で数えてみればいいのでは(?)
- 14s3040:
- 今回, 求めた
を図9.6 に表して結合性と反結合性の
を区別することができていたが非結合性の
が出てきた場合
が 3 つ求められたということでしょうか? また図で表すとどのように表されるのですか? M: 14s3005 の前半も参照 // 原子オービタルを基底関数として, そのユニタリ変換で分子オービタルを作っている. 従って基底関数の数と分子オービタルの数は一致している. 図10.12, 10.13 の
オービタルが非結合性オービタルの例. 原子間の化学結合に関与しないので, 分子の構造が変化してもオービタルエネルギーは変化しない.
- 14s3041:
- 図6.9 [原文ママ]において,
では
と
の値は一緒になるのですか. M: 式が与えられているので, 自分で計算してみればいいのでは(?)
- 14s3042:
- クーロン積分, 交換積分では, 物理的にどのような電気的な力を表しているのですか. M: 14s3038 参照
- 14s3043:
は
H
のエネルギー,
1s は H 原子 1s のエネルギーであるのに,
1s
が結合エネルギーを表すのですか? M: ``結合エネルギー'' とは, どういう意味か? 何のエネルギーか? 図5.6 も参考に.
- 14s3044:
- 交換積分
が古典的な解釈では説明できない, ということでしたが, あえて古典的に言うなら単なる補正項ということで考えてよいのでしょうか? M: ``補正項'' と言われると, 補正のないゼロ次近似の項に比べて小さいとか重要性に劣るようなイメージがあります. しかし図9.7 に示されるように, 化学結合の存在は交換積分によってもたらされているので, ``補正項'' ではないような気が......
- 14s3045:
- 水素分子の波動関数に付随するエネルギーを求める際, 分子についてクーロン積分と交換積分を使い分けていましたが, どういう部分に着目して使い分けをすればよいのでしょうか? M: 使い分けも何も, 全然別のものだから別の名前が付いている. 教科書 p.359 をよく読めばいいのでは(?)
- 14s3046:
- 化学結合について量子力学的な考え方で計算していますが, 分子間力や水素結合についても 量子力学で解いていくのでしょうか. M: ミクロの粒子の話なのに, 他に何を用いるというのでしょうか?
- 13s3001:
- 反結合性オービタルに電子が 1 つでも入っていると結合性オービタルに電子が入っていたとしても原子間の結合を維持することは不可能ですか? M: 全電子密度分布を考えればいいのでは(?) 簡便な手法としては, 結合次数を考える.
- 13s3006*:
- 交換積分はなぜ古典的に解釈できないのでしょうか. H
A と H
B の重なった軌道に存在する電子が H
B から受けるクーロンポテンシャルといったように解釈すると どこが間違いなのでしょう. M: 自分の考えを出しているのは非常に良い事です. // ``重なった軌道に存在する電子'' に苦心のあとが見て取れますが, それってもう古典的描像じゃないよね. 波動関数の二乗は粒子の存在確率だが, 異なる波動関数の重なり (積) に対応する物理的な実体は無いよね.
- 13s3023:
-
H
の結合性オービタル及び反結合性オービタルは なぜ, それぞれ基底状態と励起状態を表していると分かるのですか. M: Ritz の変分法を復習する必要がある(?) 7.2 参照
- 13s3025:
-
H
の結合キョリについて, 実験値と理論値が大きくずれているように見えるが, このズレを小さくする手段として何があるのか? M: 14s3010 参照
- 12s3017:
- 結合性と反結合性軌道でエネルギー以外にはどんな違いが出てきますか? M: 講義では波動関数についても説明したのに, 伝わっていなくて残念. 教科書や参考書をよく読んで復習すればいいのでは(?)
- 12s3024:
- 水素結合のような共有結合以外の結合でも図9.6 のような極小点は存在するのですか? M: ``結合が形成される'' とは, 核間距離
と全エネルギー
との間に, どういう関係があるという意味か?
rmiya, 20160126