プログレス物理化学 II (20150123)
M:
以下は宮本のコメント
12s3033:
,
などの
や
は何を意味するのか.
M:
の指標表を見てください. 既約表現の次元に応じて
,
,
, ... となっています. 例によって spdf... のギリシャ文字対応バージョン.
12s3035:
CO
の
振動などで, C の位置を固定してその分 O を動かすという考えはダメなのでしょうか.
M:
分子の重心の位置が動いてしまっては, 厳密な振動運動とはいえません.
12s3036:
理論的には禁制であっても, 少しは観測されると言ってましたが, どのようなことが原因でそのようなことが起こってしまうのか?
M:
厳密な言いかたは少し違う. 理論的に禁制は禁制, 許容は許容である. 科学の理論 (物理理論) について, 何か勘違いをしている人が多いのでしょうか. 「理論的に○○である」といった時に, その言明は正しい. ただし, その理論の根拠をきちんと吟味すると, たいていは明示的・暗示的に限定条件がついているはずである. ある理論とはその限定条件の下でのみ厳密に正しく, 無条件に正しい理論はほとんど無いだろう. // 今回の場合, 分子の構造が厳密にその点群に属する幾何学的な構造をしているという, 暗黙の前提がある. しかし既に学習しているように, 分子は剛体ではなく, また分子を構成する原子は互いに相対的に静止しているわけでもなく, 原子間の結合長や結合角は振動している. したがっていわゆる ``禁制遷移'' という言い方のほうに問題がある(?) 詳細は次回.
12s3040:
i の対称要素を持つとき交互禁制となるが, なぜ i があると交互禁制となるのか.
M:
脊髄反射みたいなことをせず, どれだけ自分で考えたのでしょうか? i の対称要素を持つ点群では, x, y, z ベクトルは u の対称性をもつのに対して x
, xy 等の二次の基底は g の対称性をもつので, 互いに排他的である.
12s3045:
遷移を起こす相とは どういうものなのか.
M:
何の話でしょうか?
12s3047:
群論を用いて, 赤外線吸収や Raman 散乱の許容・禁制を予測できることはわかりましたが, 実際にどれほどの波長の赤外線を吸収するか, Raman 散乱するなどは理論上で計算できないのでしょうか? やはり実際に測定するしかないのでしょうか?
M:
ですから, そのための遷移確率です. 試料分子に照射した光子のうち, どのくらいの確率で吸収されたかが, まさしく透過率 (吸収率) になるでしょ. ただしこのためには, 遷移モーメント積分を定量的に評価しなければいけません. 基底状態と励起状態の正しい波動関数がわからなければならない.
11s3013:
電子の遷移で禁制であっても実際には観測されますが, 理論的には確率は 0 です. この矛盾を補正する式はありますか?
M:
12s3036 参照
補足:
遷移を引き起こす相互作用のハミルトニアンについて. 講義で板書したもの (私のメモ) の由来がどこだったかは不明です (勘違いの可能性もある). スミマセン. 以下に訂正します. (マッカーリ &サイモン の 13 章, 14 章 も参照)
遷移の種類
相互作用ハミルトニアン・同等の対称性を持つもの
備考
電子遷移
(電気双極子モーメント)
紫外可視吸収, 蛍光 (りん光はスピン多重度の変化を伴う)
同上
等の二次の基底
電気四極子遷移 (寄与は非常に小さい)
同上
等の角運動量
磁気双極子遷移 (寄与は非常に小さい)
振動 (IR)
,
,
(電気双極子モーメント)
IR スペクトル, 分子の双極子モーメントの変化
振動 (ラマン)
,
,
,
,
,
等の二次の基底 (分極率)
ラマン散乱
スピン
, 等 (角運動量の昇降演算子)
NMR, EPR (ESR) の通常の実験配置 (
)
他
rmiya, 20150202