プログレス物理化学 II (20130111)
M: 以下は宮本のコメント
- 10s3003:
- 軌道が縮退している場合は, 対称操作した場合 固有関数はどうなるのですか. M: C
の規約表現の表現行列 (の一例) が, マッカーリ・サイモンの p.502 に記載されています. これをベクトルに作用させた例が p.503 にあります. ここで例えば
と
を, アンモニア分子の窒素の p 軌道だと考えてください. このように関数の場合も, 縮重度に応じた数の関数を組にして, 対称操作による変換を考えなければなりません. そうすると, 対称操作によって, 見掛け上は関数の形が変わってしまうかのように見えます. しかし心配無用. 固有関数が縮重している場合は, それらの任意の線型結合もまた同じ固有値に属する固有関数になっているという ``重ね合わせの原理'' を思い出してください. これについてのもうひとつの例が, 教科書 p.432-433 と p.488 のベンゼンのπ電子軌道です.
- 10s3010:
- 同位体の存在する元素は他々[ママ]ありますが, 水素の同位体のみ D という記号があるのはなぜでしょうか. M: 三重水素に T という記号を使う場合もありますネ. いろいろと重要なので,
H ではなくて固有名があると便利なのでしょう. 炭化水素化合物の重水素置換体の構造式も書きやすいし... :-p
- 10s3018:
H NMR で
C と
H はカップリングするのに,
C と
H がカップリングしないのはなぜ? M: 残念でした.
C は陽子 6 個と中性子 6 個の偶偶核なので, (基底状態で) 核スピンはゼロです.
- 10s3023:
- 絶対零度以下の物質の作成に成功見たいな記事を見つけたのですが, 絶対零度より下の温度はどのように測定しているのでしょうか. M: まあ, その記事に書かれた研究をしている人に聞くのがよろしいのではないでしょうか. Wired news の web サイトを見ると, 反転分布したような模式図が示されているので, その分布をボルツマン分布に当てはめれば, 負の (絶対) 温度ということになるのでしょう. これまででもレーザー発振のための反転分布状態を作ることは, 負の温度の状態を作ることに相当したのだが, これは物質の平衡状態ではないことは自明. でも件の記事では, 平衡状態なのか過渡的状態なのか準安定状態なのか, わかりませんね. くわしくは論文を見ろということか. //
絶対零度以下の物質を使って永久機関が作れるかもしれないということについては, 直感的には, 現在の熱力学が温度の下限が零度であることを元にしているので, これを引っくり返すという意味かなとも思う. すなわち熱力学を否定することで, 熱力学で禁止されていることの実現可能性を期待するということ. 本当にそうかどうかは, ちゃんと考えないとネ.
- 10s3029:
- 絶対温度より低い温度にしたという話が話題になってますが, これを利用できると, 永久機関がつくれるかもしれないとなってますが, なぜ絶対温度より低いと作れるんでしょうか. M: 10s3023 参照
- 10s3036:
- 原子核の陽子を電子に変換して, 周りの電子を陽子に変換したような物質は存在できるのでしょうか. M:
H については, すでに存在する!! :-p
// 反物質は, 要望のものとは少し違うようだけど......
- 09s3040:
の求め方について,
を用いて求める方法が少しややこしいので, 他の簡単な方法はありませんか. M: ``
を用いて求める方法'' ってのが, よくわかりませんが, 対称操作の表現行列を求めることであれば, 以下のとおり.
まず, 求める表現
の指標
の定義が, 表現行列の対角和なのだから, 表現行列を無視する訳にはいかない. しかし, 指標を知るために必要なのが, 表現行列の対角要素であることに注目すれば, 表現行列の全部の要素を知る必要はないことに気づく. すなわち, 対角要素だけ分かればよい. そこで, 対称操作によって位置が変わらないもの (向きは変わるかもしれない) の数を数えれば良いことになる (向きが変わるものは,
個と数える). 詳しくは基準振動解析の時に説明します.
Ryo MIYAMOTO, 2013-01-15