** 質問と回答 (2003-01-22, M が宮本による回答)

01s2001: 電子や光子は何によって構成されているんですか。それともこれ以上細かく できないんですか。

M: 素粒子の表 (例えば理科年表) を見ると, 光子は力 (電磁気力) を媒介する 素粒子で, 電子はレプトンと総称される素粒子の一つですね。したがって, いずれも それ以上細かい構成粒子に分割することはできません。

01s2002: 水分子がある。もしこれの核や電子ではなくそれを構成する粒子そのものが 変化したとすれば, その水分子が集まってできた水の性質は変化していると 思いますか ?

M: そうなったら, それはもう「水」じゃぁないのでは ?

01s2006: 波束発散は相対論と矛盾するのでしょうか ? どうなのでしょう ?

M: 波束の収束は局所性に関連して議論され, 標準的には全体で一つの系であるとの 解釈が主流です。しかし, あなたのいう「波束の発散」とは何のことでしょうか ?

01s2019: 原子スペクトルによってナトリウムランプがオレンジに光るように, 花火の色なども原子スペクトルによって光っていると言えるのですか。 どうしてあのように光るのですか。

M: 基礎化学実験では数種の金属イオンの炎色反応を観察しましたね。あれが各々の 原子の発光です。(ナトリウムはオレンジだった) 夜空を美しく彩る花火も, 火薬に 加える金属 (塩) の種類を工夫しているのだと聞いたことがあります。

01s2027: 分子における双極子モーメントを利用したものは何があるか。

M: 分子の電気双極子モーメントの利用については, 家庭では電子レンジが最も ポピュラーでしょう。ややマニアック (でも重要) なものとして, 電気部品の コンデンサー (電極間に誘電体をはさむ) はいかがでしょうか。

01s2031: 量子コンピュータや量子暗号通信が実現されると現状のそれらと どうかわるのか。

M: 性能が向上すると期待されるから, 研究されているのでしょう。すなわち量子 コンピュータなら計算速度の向上だし, 量子暗号通信なら通信の安全性 (秘匿と改竄 等の検証) の向上。

01s2032: 市販の家電製品 (電子レンジ, TV など) から, よく電磁波が放出されて いると聞きますが, 実際放出されている電磁波は特定のものなのですか。

M: 使われている周波数帯と電気回路・筐体による遮蔽によってまちまちでしょう。 ちまたでは, その辺の区別について配慮を欠いた扱いがなされているので, 注意が 必要です。例えば TV 受像機の正面から, 可視領域の電磁波が放出されていることは 確かだと思われます。

01s2034: 実用的に使われているナトリウムランプなどは, なぜ長時間発光できるの ですか ? 遷移はそんなに長時間かけて起るのですか ? すぐにでも安定なエネルギーの オービタルに遷移して, あっという間にエネルギーを光子として失ってしまうような 気がするのですが。

M: 「長時間かけて遷移が起る」という意識は認識違いです。質問の答えとしては, 電力というエネルギーを供給して, 基底状態になった原子から励起状態を作り続けて いるからです。

01s2035: 電子けん微鏡 (ママ) を用いてもその波長より短いと検出できない。 これを解決するためにはどうすればよいか ?

M: 電子の物質波としての性質を利用しているわけですが, その波長は運動量に 反比例します。すなわち電子を加速する電圧を高くすることにより波長を短くする ことができます。

01s2041: 結合長はどのようにして測るんですか ?

M: いろいろな方法があります。回転スペクトルから分子の慣性モーメントを通して 原子間距離を得たり, 単結晶による X 線あるいは中性子線の回折から原子の配列 すなわち分子構造を得たり, 磁気モーメントを持つ核スピンあるいは電子スピン間の 相互作用エネルギーからスピン間の距離を見積もったりもします。

01s2047: 宿題の問題の難易度は生徒が理解できるレベルだと思いますか。

M: 理解には努力が必要です。その結果, 能力の向上が期待されます。

01s2051: 近似に関して, 例えば限りなく 0 に近くなっていても, その可能性は 0 で はない。それならば, 理論上では低い確率でも存在するはずであるが, それは観測 されるのか ? もし, されていないとしたら, それは理論として正しいとは言えない のではないだろうか。

M: 例えば理論的な確率が 10-9 だとすれば, 109 回の観測に 1 回あるという ことですね。でもたった数回の観測においては, ほとんどありえない確率だとは言える でしょう。理論と観測に少しの矛盾もありませんね。

01s2059: 光子が消滅することはありうるのですか ? 消滅しないのであれば, 太陽 などの恒星が存在する限り光子は増えつづけるのですか ?

M: 光子のエネルギーが電子に吸収されることで, 電子は励起状態に遷移します。 この時にもちろん光子は消滅します。また逆に, 励起状態にあった電子が基底状態に 遷移すると, 対応するエネルギーが光子の形で放出されます。すなわち光子が生成 されます。

01s2061: 黒体複射 (ママ) の時に「内部を十分な光で満たし……」と言って いましたが, どのようにして内部に十分な光を満たすのですか ? また十分な光とは どの位ですか ?

M: 黒体輻射の問題において輻射のスペクトルは黒体の温度と密接な関係があります。 すなわち光エネルギーの元は熱です。そして ``十分な光'' とは, 空洞内の輻射と 壁 (黒体) との間でのエネルギーの移動が平衡状態になっているという意味ですね。

01s2063: レーザー光線は, 体にあたっても何ともないのに, レーザーメスは, 同じレーザーなのに, 何で体を切ることができるのですか ?

M: 用いるレーザー光の輻射強度・エネルギー密度が全く違います。

01s2070: 電磁放射線ではなくて, 電磁波としないと適切ではないのはどういう わけか。

M: 日常的にも技術的にも, 後者の用語の方が普通に使われているということです。

01s2071: 解析的に解くというのはどういうことなのか ? 近似的に解いて問題は おきないのか ?

M: 記号操作による式の変形だけで解を得るということ。問題が起きない程度の レベルの近似を採用すれば良い。

01s2073: 二つの電子は識別は不可能なのに, その電子の交換の話は成り立つのか ?

M: 量子の世界では日常的な常識が通用しないこともあるのだよ ... :-p

Pauli の原理により, 複数の電子 (フェルミ粒子) がスピンまで含めて同一の状態を 取ることはできません。すなわち全ての電子はそれぞれ異なった状態にあるので区別 できます。しかしある電子 A と別の電子 B を交換する前の状態と交換後の状態を 区別することはできず, どちらも同じ状態を表わしています。粒子の識別性とは そういうことです。

01s2074: 科学の最終目標は何ですか ?

M: やっぱり TOE (Theory of everything) でしょう。``人類にとって'' というので あれば「ここはどこ ? わたしはだれ ?」という問に答えることだと, 立花隆は言った ように記憶してるんだけど ... 出典はどこだ ?

00s2022: 電子顕微鏡とトンネル効果の話で, 針と見たい物に電圧をかけると, その空間にトンネル電流が流れるとあったが, ここの間には空気があるのでしょうか。 それならば, 雷などの真空放電とどう違うのでしょうか ?

M: ポテンシャル障壁の高さに比べてどの程度のエネルギーを電子に与えるかが肝要 でしょう。一方で, 探針と観察対象物体との間隔と空気の分子の大きさとの関係は, どんな具合いだと想像しているのでしょうか ?

99s2062: 永久機関, 永久エネルギーは実際に存在するものなのですか ?

M: いまさらこんな質問が出てくることに驚きを覚えます。熱力学の第一法則・第二 法則をしっかり身につけてください。

99s2076: 雪の結晶をけんびきょうでかんさつするときは, 極寒にしてかんさつ するのですか ?

M: 少なくとも観察対象である雪の結晶が壊れないようにする必要はあるでしょう。 観測するあなたが寒さに耐える必要があるかどうかは, 観測装置しだいでしょう。


2003-01-30, Ryo MIYAMOTO