超分子化学 (Supra Molecular Chemistry) は、分子間(非共有結合性)のゆるやかな結合相互作用によって結びつけられ、組織化され、個々の分子を超えた複雑な化学物質の化学的、物理学的、生物学的性質をカバーする高度に学際的な科学分野です。この分野は比較的新しいものの、すでに首尾一貫した系に定義され、概念化され、構造を与えられています。そのルーツは有機化学と分子構築のための合成法、配位化学、金属イオン・配位子複合体、物理化学、相互作用の実験的・理論的研究、生化学および基質の結合と認識に始まるすべての生物学的過程、物質科学と固体の力学的性質にまで広がっています。超分子の研究のもつ大きな特徴は、ちょうど化学、生物学、物理学の接点に位置するという状況に助けられて、互いに発達を促す働きによって与えられる視野の広さです。組織化された凝縮系の物理学に迫り、巨大分子の集合を扱う生物学に広がることによって、超分子化学は超分子科学へと発展していきます。このように広い展望は、化学者の創造的イメージに対する大いなる挑戦であり、刺激であるといえます。


 1967年にPedersen(ペダーセン)が分子認識能を持つ人工的な化合物として、クラウンエーテルを発見しました。Cram(クラム)は、これをさまざまな分子システムに展開し、ホスト-ゲスト化学という分野を開拓しました。ホストとは、分子を受け入れる側の分子であり、ゲストとは認識されれる側の分子のことです。その後1978年に、 Lehn(レーン)は、自己集合体なども包括的に含んだ超分子化学の重要性を主張しました。Lehnは”超分子化学”を、複数の分子が弱い非共有結合性の分子間力によって会合し、高秩序の分子集合体を形成することによって示される新しい機能を対象とする学問であると定義しました。ここで、超分子化学がはっきりとしたかたちで我々の前に、姿を現しました。Pedersen, Cram, Lehnは、1987年に揃ってノーベル化学賞を受賞しました