月刊ホームページ2002年2月号

Topへ 1.はじめに 2.どうすれば光るの 3.特徴は 4.もっと明るく 5.何ができるの 6.日本の施設 7.おわりに

5.どんなことができるの?
はじめにもお話しましたように放射光は自然科学のすべての分野にわたり幅広く利用されていますので、そのすべてをご紹介することはできません。ここでは表面物性に関係する極々一部の研究例について簡単に紹介したいと思います。

広域X線吸収微細構造(EXAFS:Extended X-ray Absorption Fine Structure)
EXAFSは様々な種類や大きさの分子や様々な固体の表面がどのような原子構造になっているかを調べるための実験方法です。放射光の持つ幅広い波長連続性という特徴を利用しており、放射光がないとできない実験です。その原理は以下のとおりです。原子は原子核とその周りをまわる電子によって構成されていることはよく知っていると思います。この軌道電子は外部からある一定以上のエネルギーをもった光の照射によって真空中に取り出すことができます。この現象を光電効果、出てきた電子を光電子、そのぎりぎりのエネルギーを吸収端といいます。吸収端の前後では光電子の量が劇的に増加するわけです。さらに照射光のエネルギーを増やしていくと光電子の強度に微妙ですが周期的な変化(振動)が現れます。これは放出された光電子が隣の原子によって散乱される干渉効果です。振動の周期から隣の原子との結合距離がわかりますし、吸収端のエネルギーは原子の種類によって違いますのでどの原子とどの原子の結合距離なのかもわかります。図は銅(Cu)の表面に酸素(O)を吸着させた表面(上)とカルボキシル基(COOH)を吸着させた表面(下図)のEXAFSスペクトルです。



EXAFSスペクトル

光電子強度振動
EXAFSでは光のエネルギーを連続的に走査していったときの光電子の強度を調べます。一方、光電子強度振動は、大強度の放射光を利用して、表面で生ずる様々な物理化学反応を時間を追って観測します。図はシリコン(Si)表面にジシラン(Si2H6)ガスを使って表面熱化学反応によりシリコンを堆積させているときの光電子を測定したものです。光電子の強度が何周期にも渡り規則正しく振動しているのが分かります。またジシランの導入圧力を上げると振動の周期が短くなっていくことが分かります。詳細な研究の結果、この振動の1周期はシリコンの2原子層(厚さにして約0.07nm)の堆積に対応することが分かりました。非常に薄い膜の堆積が光電子強度の測定により観測可能になったわけです。
光電子強度振動
引用文献[6]
シリコンの原子層成長



4.明るくするには? 5.何ができるの? 6.日本の施設

驚異の光:放射光
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